うさぎのねどこ

二人の息子育て・忍耐強い自分育てに奮闘中

サンちゃん

花粉の嵐吹き荒れる中、サイクリングを決行した。
道路の向こう側の学校からタバコをくわえた生徒が出てきたのを目撃した。
あまりに手本どおりの「ツッパリ君」なのでツイまじまじと眺めてしまい、ガンをとばされた。
花粉よけのメガネをいいことに近視のフリをして逃げた。
校門を確認すると、そこは中学校だった。
(どうでもいいが下から読んでも「中央中」だった)
私の中学校にあんな筋金入りのツッパリっていたっけ…と考え、「サンちゃん」のことを思い出した。


サンちゃんは他のハンパな不良とは桁違いに究極に顔がコワい。
でも、ひねくれてツッパッっちゃったのではなく、自分のやりたいようにしていたら
自然とそうなった…ようなので、そばにいても実害はなく、風俗好きの男性音楽教師などを
小突きまわす程度だった。
人の自習プリントで床に落ちたゴハン粒をとったりしていた私の方がよほど底意地が悪かったかも。
でも彼がキレたら本当に!怖い。というのは誰もが知るところだった。
昔の仁義をわきまえていたヤクザはこんな感じだったのかとも思う。
古き良きヤクザは一般市民には手を出さず、他のシマのヤクザから縄張りを守っていた。らしい。
方法はともかく、間接的に一般市民を守ることもあったのかも。
サンちゃんも意図せずにそうした役割を担ってしまったことが一度だけある。
中学3年の社会科見学先は夢の王国・○ィズニーランドだった。
とはいえ制服で班行動しなければならないのがチュウボウの哀しいところ。
それでもサンちゃんはワイシャツの第3ボタンまで思い切って外し、銀の十字架を架けて、
彼なりのハレの気分を味わっていた。
同じ班には生意気な口をたたいてしょっちゅうサンちゃんからどつかれている「マサキ」がいた。
(私もいた)
勝手なマサキは入場早々土産を買い始め、私や班長さんはコレ幸いとまいちゃおうと思っていたが
なぜかサンちゃんがブチ切れて「テメェ!何してんだよ!!」とマサキに一喝したのだ。

…オチ、見えましたか。

マサキはちょうど他の学校の生徒からカツアゲされている最中で、彼らは「テメェ」を自分達のことだと
カン違いし、こんな弱げなヤツが十字架ぶらさげてソリ込み入れてるケンカ上等様とお仲間なのかと
驚き、ソソクサと逃げてしまった。
事の真相を知ったサンちゃんはしおらしくお礼を言うマサキに「ほっとけばよかった」と
実につまんなそうだったが、女子の人気は確実に高まった。
私はそのとき「余計なことしたなぁ」と思っただけだったが、
後日、教室の片隅に放置されたサンちゃんの絵付湯のみ茶碗に

 ▽  ← のみくち  

とだけ描かれてあったのを発見したときはそのシュールさにほれぼれした。
今彼はどうしているんだろう。善良なお父さんになってたりするのかしら。